序章

4/5
前へ
/67ページ
次へ
「まったく…馬鹿にするにも程があるわね。この私を女と侮って油断するなんて、最低の侮辱だわ」 少女はそう言って、ナイフにさらに力を込めた。顔を確認しようとするが、暗さのためそれがかなわない 「…くっ!!」 『油断さえしなければ、殺すことができた』と言外に言われ、影は悔しさに顔を歪めた。 (それにしても…) 少女は自分の下で倒れている者の姿を見て僅かに驚いていた。突進してきた時からまさかとは思っていたが、悔しそうな呻き声を発しながら少女に鋭い視線を送るその姿は、まだ11~2歳の子供だったのである。 「…殺せよ」 少女が一瞬考え込んでいる間に、この若すぎる暗殺者は、初めて声を聞かせた。少女はその言葉に瞠目する。 「どういう意味かしら?」 だがそんな様子はおくびにも出さず、少女は静かに問い質した。 「俺は任務に失敗した。この命にもう意味などない。だからはやく殺せ」 子供の言葉に少女は深い嫌悪感と不快感を憶えた 「…つまり私にあなたを殺せということ?」 「他に誰がいる?」 「くだらないわね」 子供の言葉を少女は一刀両断した。
/67ページ

最初のコメントを投稿しよう!

45人が本棚に入れています
本棚に追加