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「まったく…馬鹿にするにも程があるわね。この私を女と侮って油断するなんて、最低の侮辱だわ」
少女はそう言って、ナイフにさらに力を込めた。顔を確認しようとするが、暗さのためそれがかなわない
「…くっ!!」
『油断さえしなければ、殺すことができた』と言外に言われ、影は悔しさに顔を歪めた。
(それにしても…)
少女は自分の下で倒れている者の姿を見て僅かに驚いていた。突進してきた時からまさかとは思っていたが、悔しそうな呻き声を発しながら少女に鋭い視線を送るその姿は、まだ11~2歳の子供だったのである。
「…殺せよ」
少女が一瞬考え込んでいる間に、この若すぎる暗殺者は、初めて声を聞かせた。少女はその言葉に瞠目する。
「どういう意味かしら?」
だがそんな様子はおくびにも出さず、少女は静かに問い質した。
「俺は任務に失敗した。この命にもう意味などない。だからはやく殺せ」
子供の言葉に少女は深い嫌悪感と不快感を憶えた
「…つまり私にあなたを殺せということ?」
「他に誰がいる?」
「くだらないわね」
子供の言葉を少女は一刀両断した。
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