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「…ありがとうございました。助けて頂かなかったら…きっと私は……」
あれからこの家族は、クリスマスの夜に作るはずだった沢山の料理を私に振る舞ってくれた。
まだ、25日になったばかりだと言うのに。
「いえいえ、いいんですよ。しかし……サンタさんも大分苦労しているようですねぇ」
ボロボロになったサンタ服を見ながら、女性は言った。
「…いや、実は…トナカイが欲しいという子がいましてね。サンタが拒むわけにもいかず、今まで自分の足だけで配っていたんですよ」
私は苦笑いを浮かべるしかなかった。
なんて情けないんだ。
もう配れる時間はない。
サンタ…失格だ。
「……あとどのくらい残っているんですか?」
何かを考えながら、男性が私の方を向いた。
「残り…30個くらい、です。朝までにとても配りきれるとは…」
ため息しか出なかった。
夢を与えなければならない私が、迷惑をかけ、諦め、情けない姿を晒している。
そんな私に彼が言ったのは……。
「だったら…私たちが協力しますよ」
……思いがけない言葉だった。
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