168人が本棚に入れています
本棚に追加
俺は必死に立ち上がろうとする。
でも、力を入れる度、全身が悲鳴を上げた。
「くっ…ぅ…。」
あまりの痛みに、声を漏らす。
「追われてるなら、きっと大丈夫ですよ。」
優しい声が、俺の動きを止める。
「この辺り、すごい森で。
樹海って、言うんでしょうか?
だから、僕みたいにこの森をよく知っていないと、すぐに迷ってしまいますから。
だから、きっと見つかりませんよ。ね?」
青年は優しく俺に笑いかけた。
…そんな所なら、大丈夫そう、だな…。
「でも、いいのか…?
迷惑、かけるだろうから…。」
「いえ、大歓迎です!
ずっと1人きりでしたから、話し相手が欲しかったですし。
僕は朔久(さく)。
あなたは?」
「優喜…。」
「優喜さんですね。
よろしくお願いします。」
朔久はニコッと笑う。
…落ち着く。
なんだか、懐かしい雰囲気…。
口調は違っても、兄貴に、似ている…。
「さん、なんて付けなくていい。
普通に、優喜って呼んでくれ。」
兄貴に似ている、この人に…。
兄貴に貰った名前を呼んでもらいたかった…。
最初のコメントを投稿しよう!