桜の花が舞う季節

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僕は毎年、桜が舞うこの季節になると昔の事を思い出してしまう。それは僕にとってとても悲しいできごとだった。 今からもう5年も前の話である。当時、僕は小学5年生だった。同じクラスのある女の子に恋をしていた。それが僕の初恋だった。彼女の名前はさくら。名前のとおり、桜のような可愛い女の子だった。5年生の時、僕は毎日学校に行くのが楽しみだった。彼女に会えるのが嬉しくてしょうがなかった。しかし、そんな日々はあっという間に過ぎた。僕は6年生のクラス替えが嫌だった。彼女に会えなくなるのが嫌だった。 5年生が終わり6年生のクラス替え発表の日、僕は憂鬱な気分で学校へ行った。学校に着き廊下に貼ってあったクラス替えの表を恐る恐る見た。とりあえず自分の名前を探した。僕の名前はすぐに見つかった。そして、祈る気持ちで自分と同じクラスの名前を見た。しかし、そこにさくらちゃんの名前はなかった。さくらちゃんが何組になったのか気になって他のクラスの名前も確認したが、なかなか見つからなかった。彼女の名前はどこにもなかった。その日の午後、彼女が春休みのあいだに引っ越したのを初めて知った。お父さんの急な転勤だったらしい。夜は自分の部屋で泣いた。目が腫れるまで泣いた。
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