桜の花が舞う季節

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僕の初恋は気持ちを伝えられないまま終わった。 それから普通の日々が続き5年が過ぎ、今年もまた桜の季節に彼女の事を思い出していた。 中学校生活も終わり、今日から高校生活が始まろうとしていた。桜が舞う中、不安と期待を抱き学校へ向かった。学校に着き自分のクラスに入ると黒板に座席表が貼ってあった。僕は自分の席を探した。窓際から2列目の1番うしろだった。僕が席に座り、一息つこうとした瞬間だった。隣の席から「久しぶりだね」と急に話しかけられた。聞き覚えのある声だった。僕は振り向いて驚いた。まるで夢のようだった。そこに座っていたのが、さくらちゃんだったから。見た目は少し大人っぽくなっていたが、笑った顔はあの頃と変わっていなかったので、すぐにさくらちゃんだとわかった。さくらちゃんが小学生の時に1年間クラスが同じだけだった僕の事を覚えていてくれた事がすごく嬉しかったが、その時は嬉しさより恥ずかしさのほうが大きかった。僕はさくらちゃんの顔が見れず、窓の外に視線をむけた。窓の外から春の風に舞う美しい『サクラ』が僕を見て笑っているように思えた。 あの日、見つける事が出来なかった彼女の名前を、この日、1枚の座席表で見つけた。
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