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「おせ~ぞ。トイレ詰まらせたのかと思ったじゃねぇか。」
優が言ってた通りのようなことを言っている店長に愛子は吹き出した。
「もぅ食べる前に汚いな~」と眉間に皺を寄せる優。
「やっぱり、仕事の後のお肉は格別ぅ」
幸せそうに豚トロを頬張る優。
外はもう白んできていた。
「よし、帰るか」
会計を終えた店長がコートを羽織る。
外は朝日が昇り始めていて綺麗だった。でも、寒さは格別。誰かがしゃべる旅に白い息が朝の街に溶けてゆく。
家が近い順番に送迎が始まった。
「あっ!店長!私、まだ街に用事があるのでここでいいです」
「愛子!また夜ねぇ」
おそらく彼氏のとこへ向かったのだろう。愛子の背中を見送る。
次から次にみんな降りていき最後は優だけになった。
「店長、ありがとうございました~それから、ごちそうさまでした。あ・何か飲んでいきますか?」
「おっ、気がきくようになったな」
にかっと笑った。店長は来客用駐車場に車を止めてきた。「紅茶でいいですか?それともビール?」
「床でいいから少し寝かせてくれるならビール」
「焼酎もありますよ?」
「そんなに俺を帰したくないのか?」
と調子に乗るから
「別に。警察に捕まって困るのは店長であって私じゃないですからね」
と素直じゃない口調になってしまう。
そんな自分がもどかしくて冷蔵庫を開き、ビールを一気飲みする。
お酒の力に頼るわけじゃないけど。
「俺にくれるんじゃないのかよ。自分だけ飲みやがって~」
と、優が飲んでいたビールは店長に没収されてしまった。
(あ…間接キス…)
高鳴る鼓動はきっとビールのせい。
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