恵莉奈

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「・・・・・」 暫く待ってみたが返事がない。 「居ないのかな?」 私はドアに手を掛けて、勢い良く開けた! 「…ん~っ!!もう!」 生徒会室のドアはビクともしなかった。 どうやら鍵が掛かっていたみたい。 (…パタパタ…) 「ん?」 私は音のする方を見た。 誰かが走ってくる。 (…パタパタパタ…キュッ…ドサァッ!…バサバサバサ…) 「あ…」 誰かが転び、書類が宙を舞った。 私は思わず駆け寄った。 「大丈夫ですか!?」 「…だ、大丈夫です」 彼は、ズレた眼鏡を直しながら言った。 それから床に散らばった書類を、手早くかき集め始めた。 「私も手伝います」 と、近くにあった書類に手を伸ばした。 「あ…」 彼の手が私の手に触れた。 (…ドキン) 心臓が跳ねる。 「す、すいません」 と、彼が赤くなりながら顔を上げた。 「すすすすす須藤奏先輩!」 私は思わず大声を出してしまった。 人気のない廊下に声が響く。 「やっぱり…」 先輩はそう呟いた。 (…やっぱり?) すごく気になったが、聞けなかった。 だって、集めた書類を抱えて立ち上がっていたから。 「書類どうも有難う御座いました」 先輩はそういうと、生徒会室の方へ歩き出した。 「ぁ、あの!」 「ダメ」 「ぇ?」 即答だった。 私はポカーンとしてしまった。 「生徒会には入れないから」 「な…んで…ですか?」 ショックだった。 少しでも先輩の側にいたくて、ここまで来たのに… 「とにかくダメ」 そう言い残して、先輩は生徒会室に消えていった。 閉ざされたドア… 1人廊下に残された私は、ドアの前で立ち尽くしていた。 (…どうして?) 訳がわからない。 (…先輩…) 物言わぬドアを見つめたまま、 気が付くとその場にしゃがみ込んでいた。 (私…先輩の側にはいれないんだ…) こみ上げてきた涙をぐっと堪え、袖で涙を拭った。 「泣か…ないもん」 何を思ったか、鞄から油性マジックを取り出した。 そして、床にメッセージを残した。 「よし」 私はその場を後にした。
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