第1章

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事務所に今日、1人のお客様が来た……。 ―コン コン― 黒瀬はノックの音を聞き、中から「どうぞ」と声を掛け椅子から立ち上がった。 「失礼します……」 躊躇いがちな女性の声が事務所内に響く。 「いらっしゃいませ。朝川 かなえ様」 そう言って黒瀬は微笑んだ。 「え……!?」 女性は驚いた声を上げた。 「どうかなさいましたか?」 黒瀬が尋ねると女性は驚きを隠せない表情で、 「あの、何故私の名前をご存知なんですか……?」 女性は戸惑い気味に尋ねた。 「“何故”……ですか?貴女はこの事務所の事を知っていますか?」 「詳しくは知らないですけど、“1週間に1度だけ扉が開く事務所”だと聞いた事があります。」 黒瀬は「そうですか」とだけ呟き瞼を閉じた。 そして、 「立ち話もなんですから、そこのソファに座って下さい」 「あ、はい……」 女性は促されて言われた通りにソファへと座った。 「お飲み物は何が良いですか?」 「えと……、じゃあコーヒーで」 「ミルクとお砂糖は?」 「ミルクはいいです。砂糖は……自分で入れます」 黒瀬はコーヒーの入ったマグカップとシュガーポットを女性の前に差し出した。
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