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事務所に今日、1人のお客様が来た……。
―コン コン―
黒瀬はノックの音を聞き、中から「どうぞ」と声を掛け椅子から立ち上がった。
「失礼します……」
躊躇いがちな女性の声が事務所内に響く。
「いらっしゃいませ。朝川 かなえ様」
そう言って黒瀬は微笑んだ。
「え……!?」
女性は驚いた声を上げた。
「どうかなさいましたか?」
黒瀬が尋ねると女性は驚きを隠せない表情で、
「あの、何故私の名前をご存知なんですか……?」
女性は戸惑い気味に尋ねた。
「“何故”……ですか?貴女はこの事務所の事を知っていますか?」
「詳しくは知らないですけど、“1週間に1度だけ扉が開く事務所”だと聞いた事があります。」
黒瀬は「そうですか」とだけ呟き瞼を閉じた。
そして、
「立ち話もなんですから、そこのソファに座って下さい」
「あ、はい……」
女性は促されて言われた通りにソファへと座った。
「お飲み物は何が良いですか?」
「えと……、じゃあコーヒーで」
「ミルクとお砂糖は?」
「ミルクはいいです。砂糖は……自分で入れます」
黒瀬はコーヒーの入ったマグカップとシュガーポットを女性の前に差し出した。
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