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それはまさに一瞬だった。
クリスマスパーティーからの帰り道、着慣れないスーツを少し崩して家路を急いでいた。
時刻はもう24時。
クリスマス・イブからクリスマスへと変わっていた。
まぁ、僕からみたらどっちも同じだけど。
煌めく街中を通り抜け、アパートの前へと辿り着く。
僕のは、二階建ての歴史ある木造アパート。
まぁはっきり言えば、月四万のボロアパート。
だが、大学まで徒歩二分という通学の便利さと月四万円の安さに惹かれて早二年。
今では、とても気に入っている。
二階への階段を上ろうとした、その時―
そこで事件(俺にとってそれは事件に相当するもの)は起きた。
「遅いよっ、ひぃくん!」
明るくて優しい声色。
それは俺に、懐かしさと安心感を与えた。
俺をその名で呼ぶのは、今まで彼女しか居なかった。
初恋の女の子しか。
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