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それは15年前、俺が5歳の時まで遡る。
彼女の名前は、楠木葵。
明るくて優しい笑顔の可愛い女の子だった…気がする。
そして、俺の幼なじみ。
その頃の俺は、今とあまり変わっていなかった。
冷静に物事をみていて、あまり感情的じゃないせいか、大人からみたらませた子供だったかもしれない。
今思えば、それを変えてくれたのが彼女だった。
葵はクリスマスが好きで、クリスマスが近くなるといつもその話ばかりした。
「ねぇひぃくん。サンタさんって信じてる?」
公園のブランコに座りながら、葵は俺に問掛けた。
「それ昨日も聞いたよ。葵ちゃんは信じてるんでしょ、サンタクロース」
「うん!だってパパとママ言ってたもん、いいこにはサンタさんがやってきてみんなにプレゼントくれるって」
「ぼくも居ると思うよ。でも、会ったことないからなぁ……」
「会えるよ、きっと。葵、将来はサンタさんになるから!」
そういって葵は満面の笑顔を見せた。
「ねぇひぃくん。もし葵がホントにサンタさんになったらさ」
そこからはあまり覚えてない。
そして、小学校入学の春。
葵は何も告げずに姿を消した。
俺にサヨナラも言わずに。
僕の時間はあの頃から止まってしまった。
忘れられない
忘れたくないのかも知れない
彼女のことを。
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