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そう、あの声は彼女に似ている。
もう現れる筈のない葵に。
声のする方へ振り返ると、クリスマスツリーの傍に小さな人影があった。
赤を基調にし白いファーが付いたジャケット。
赤のニット生地に白で縁取られたフリルスカート。
スカートと同じ様に大きなボンボンがついた帽子。
赤と白でまとめれたその服は、まるでサンタクロース。
「相変わらずだね」
そう言って彼女は微笑んだ。
あの笑顔は昔と変わっていなかった。
彼女は想像以上に細く、スタイルも良かった。
髪はロングのストレートヘアを緩い内巻き。
首には大きな時計のネックレス。
胸元には柊のブローチ。
靴は長いブーツを履いていた。
「…葵?」
「正解。久しぶりだね、ひぃくん」
「久しぶり…ってどうしたんだよ、こんなところで」
「うーん…ひぃくんに会いたくなったからっ!」
「違うだろ?」
「そんなことないよ、本当だもん。それに伝えたいこともあったし」
「伝えたいこと?」
「言っても良いけど、驚かないでね。」
「分かった、それで?」
「あのね…あたし、サンタクロースになっちゃいましたっ!」
まさか驚かない訳がなかった。
幼なじみで初恋の女の子が
サンタクロースなんて。
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