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「はい、どーぞ」
「あ、わざわざどうも」
そこは八畳くらいの小さな部屋だった。
家具らしい家具はほとんどなく正面の茶ぶ台には、今女の子が持ってきてくれた二つの緑茶が湯気をたてていた。
それにしても、怖いお兄さんたちがいなくて本当に良かった。
さっきはマジで人生強制終了を覚悟したよ。
茶ぶ台を挟んだ正面に座るサンタクロースの格好をした女の子。
畳とサンタクロースの衣装の組み合わせはこれ以上ないくらいに異様だ。
「それで、わざわざ来てくれたってことはサンタクロースの助手引き受けてくれるんだよね?」
「ストップ!!
いきなりそんなこと言われても困る、もっと説明が欲しい」
「そっか、そうだよね」
女の子は自らを落ち着かせるようにお茶を一口飲む。
「えーっと、私の名前は鈴木 鈴【すずき りん】、
現役のサンタクロースです」
「あの、帰っていいですか?」
「え、な、なんで!?」
だって自分はサンタクロースだ、なんて言うイタい女の子と話すのは嫌だ。
僕は少しだけ腰を浮かす。
「ちょっと待ってよぉ!!お願いだから話だけでも聞いて?」
うっ……
僕は女の子のウルウルとした涙目に負け、浮きかけた腰を再び畳に落ち着けた。
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