聖なる夜

6/20
前へ
/20ページ
次へ
    「はい、どーぞ」     「あ、わざわざどうも」     そこは八畳くらいの小さな部屋だった。   家具らしい家具はほとんどなく正面の茶ぶ台には、今女の子が持ってきてくれた二つの緑茶が湯気をたてていた。   それにしても、怖いお兄さんたちがいなくて本当に良かった。   さっきはマジで人生強制終了を覚悟したよ。   茶ぶ台を挟んだ正面に座るサンタクロースの格好をした女の子。   畳とサンタクロースの衣装の組み合わせはこれ以上ないくらいに異様だ。     「それで、わざわざ来てくれたってことはサンタクロースの助手引き受けてくれるんだよね?」     「ストップ!! いきなりそんなこと言われても困る、もっと説明が欲しい」     「そっか、そうだよね」     女の子は自らを落ち着かせるようにお茶を一口飲む。    「えーっと、私の名前は鈴木 鈴【すずき りん】、 現役のサンタクロースです」     「あの、帰っていいですか?」     「え、な、なんで!?」     だって自分はサンタクロースだ、なんて言うイタい女の子と話すのは嫌だ。   僕は少しだけ腰を浮かす。    「ちょっと待ってよぉ!!お願いだから話だけでも聞いて?」     うっ…… 僕は女の子のウルウルとした涙目に負け、浮きかけた腰を再び畳に落ち着けた。
/20ページ

最初のコメントを投稿しよう!

56人が本棚に入れています
本棚に追加