第一章

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 終電が間近になった駅のホーム。その床へと大粒の涙を落とし、しゃくりあげ続ける女性がいた。    歳は20歳前後といったところだろうか。    闇夜に白く姿が浮かび上がるのは、その長身に纏っているコートのせいだ。それはとても高価な事で名を知られるブランド製の物。   しかし近づいて見ると、所々に茶色い薄汚れが付着しているのがわかる。  その染みは払えば取れるものもあるだろうに、彼女はそれをしないでただひたすら悲痛な泣き声を上げていた。    ガタガタと震えながら、その場所に立ち尽くす足。多分…痺れが廻り、完全に感覚を無くしているだろう。  なぜなら、その足には何も履いていないからだ。    本来なら少しでも足を暖めてくれるはずのそれは、彼女の右手に握り締められていた。片方だけ残った白いヒール。  踵が折れていて無惨な姿を曝している。    吹きすさぶ木枯らしは、刺すような冷たさで彼女を蝕んでいた。    身体も……心も。    その狭いホームには彼女の姿しかない。快速の停まらぬ片田舎の駅に、夜中に人がいないのは当たり前だといえるが。
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