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遠くから響き出した音に、彼女は肩をビクリと震わせた。
同時にホームへと流れるのは、特急電車の通過の際に必ず流される注意喚起のアナウンス。
それはただ信号と繋がり機械的に繰り返す録音された言葉だ。
夜10時以降は無人のこの駅。無機質に流されるその言葉は人間の暖かみなど感じられず、今の彼女には何の抑止力も持たないようだ。
『白線の内側にお下がり下さい』
その言葉を聞きながら……彼女は足を前に進めた。
すぐ側に迫る特急電車の音を聞きながら、ゴクリと生唾を飲み込んだ。……その姿は意を決した様にホームの下へと消える。
特急電車のライトが三つ目の化け物のようにぐんぐんと迫り来る。運転手が気付いたのか、けたたましい汽笛の音が山間の駅にこだました。
彼女は静かに深呼吸をして、そのライトに真っ正面から向かい合った……。
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