1 記憶

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あれは確か幼稚園の頃。 幼なじみの秀明とブランコで遊んでいたら私の靴が勢いで数メートル先に飛んで落ちた。 「ひでちゃん、拾ってきてよ」 「やだよー、オレこんなに高くまでこいでんだから」しかたないや。 意識を集中させて、靴をじっと見つめる。ママに買ってもらったピンクのリボン付きのかわいい靴…。 こっちへ、来い。 「あっ!」 知らない男の子の叫び声でびっくりした拍子に宙によろよろと浮かんでたピンクの靴がぽとんと落ちた。 声のした方へ目をやるとそこには青いトレーナーを着た知らない男の子が目を見開いて私を見つめていた。 その少年は目を見開いて突っ立っていた。 私はその少年の顔から目を放さず、片足を爪先歩きするようにしてそろそろと靴に近づいた。 靴に手を伸ばしたその時、 「バケモンだ…」 彼の口からその言葉がぼそりと漏れた。 「え?」 思わず彼の方へ一歩踏み出した瞬間、その男の子はざっ!と身を引いて顔を歪ませて叫んだ。 「バケモン!」 その右の人差し指は私にしっかり突き付けられ、恐怖に怯えた視線は私の顔と落ちた靴を行ったり来たりしていた。 バケモンて何?どういうこと?どうして私を指差しているの?
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