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一人になった佑奈は、自分には少し大きいソファーの上で、抱えた膝に顔を埋めていた。
そして小さく溜め息をついた。
怒りや不満などではない。
安堵の溜め息だ。
佑奈は家を出てから不安に飲まれていた。
ものの半日………
だが、絶望の中で見た世界は残酷に夜の闇を呼ぶのに、自分だけは時が止まった様に何も解決出来ずにいる。
自分を冷たい峡谷に放り込む。そんな非情な世界の中での半日に
死をも覚悟していたのだ。
しかし、駆に出会った。
軽いとはいえ、犯罪じみた事をした自分だ。
通報されても、邪険に扱われても仕方ない。
それなのに、駆はそんな自分を受け入れてくれ、優しく接してくれた。
絶望の淵に立っていた佑奈にはそれがとても嬉しく、
とても暖かかった。
先程自分に笑いかけてくれた彼の目には何の悪意も偽りも感じられなかった。
ただの直感だが、佑奈にはそれだけで駆を信用する理由は十分だった。
「ありがとう」
佑奈は誰に言うわけでもなく呟いた。
そしてもう一度小さく溜め息をついた。
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