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「この子…捨て犬じゃないよねぇ。
暖か~い♪」
佑奈はベンチに座り、一匹のダックスフントを抱きしめていた。
「それにしても………このままじゃ私もワンちゃんも凍死しちゃうんじゃないかな?」
佑奈は公園の真ん中に立つ時計を見上げる。
「0時5分……今日はクリスマスだよね。
あぁ~あ、犬を抱いてクリスマスに死んじゃうならネロみたいに教会で死にたかったかもなぁ~」
佑奈が今いる公園はブランコとベンチ程度しかない小さなものだ。
風をしのげる様な物もなければトイレもない。
見たところ近所にもコンビニの様な店は無い。
家を追い出され、あまりのショックと途方に暮れたまま無意識に歩いていた為に今いる場所が何処なのかも分からない。
無い無い尽くしの今のこの状況こそ絶体絶命と言うのではないか、と佑奈は辛辣に思った。
ダックスフントが佑奈の頬をペロと舐める。
まるで「泣かないで」と言っているかの様な健気な姿が実に愛くるしく見えた。
「ありがとうね」
佑奈はダックスフントの耳を優しく撫でてやる。
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