19人が本棚に入れています
本棚に追加
/13ページ
日によって弟の体調はころころ変わる。弟の手には本。見覚えがある。宮沢賢治の、あの漫画の伝記だ。
「納戸からお母さんが持ってきてくれたんだ」
僕が持っていたものだった。中学に上がる頃には読まなくなり、納戸に片付けたのだ。
小学生の弟には丁度良い暇つぶしになっているらしく、真剣に目で台詞を追っていた。
「僕ね、この場面好きなの。妹に雪を食べさせるところ」
弟が僕にその本を向けた。何度も開いたページだ。
まさか弟が同じ事を言い出すとは思っていなかったので、少し驚いた。
最初のコメントを投稿しよう!