末期の雪を弟に

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 小学生の子供が、死の覚悟なんてするなよ。人生諦めた様な言い方、するな。  そう怒鳴りつけてやろうかと思ったが、止めた。弟にとって、それこそが生きる希望なのだろうと思ったからだ。  僕は弟からその本を取り上げ、無理やり横にさせて、蒲団を被せた。  不満そうな顔をされたが、僕が蒲団の上からぽんぽんと叩いてやると、大人しく目を閉じる。 「おやすみ」  呟いて、僕は部屋を出た。襖をそっと閉める時、弟が小さく手を振っていたのが見えた。  階段を静かに上りながら、僕は零れそうになる涙を堪えるのに必死だった。
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