末期の雪を弟に

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 どうして、お前がそれを言うんだ。僕に宮沢賢治のように、泣きながら庭の雪を取れと言うのか。  部屋に入ってすぐベッドに倒れ込み、枕に顔を押し付けて泣いた。  きっともう、弟は長くない。それはあいつ自身が一番良く解っていると思う。  だから僕にあんなことを言ったんだ。なんだそれ。まるで遺言じゃないか。  顔を上げると、椅子の上に積んである洗濯物が目に入った。制服のシャツや靴下。一番上には、白いハンカチ。  僕はそのハンカチに手を伸ばした。母がアイロンを掛けてくれたようで、広げてみるとパリッとしていた。
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