青い薔薇の傷跡

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葵は長かった髪をショートにして 『強くなろう』 そう誓った 翔から貰った 大切な指輪は指にははめられなかった 叶わなくても 翔にはめて欲しかった そして今日が 翔の命日 『これで終わりだよ。』 窓の外の夕焼けを見ながら話してた葵がくるッと振り返った 笑った葵は哀しみに溢れていた 『あいつさ私に結婚しようって指輪くれたの まだガキだってーのに(笑)』 そう呟く葵 そこにはいつもの 『強い葵』はいなかった ただ一人の少女だった 私は涙が溢れて 言葉が見つからず ただただ いつもと違う小さい背中を抱きしめた 葵は最初びっくりしていたが 今まで溜め込んでいたものを一気に吐き出すかのように 叫びにも似た かすれた声で 『だいすきだったの… 本当に大切な人だったの… 失いたくなかった 今でも忘れらんない…の』 葵はずっと『翔』という名を呟いていた―― 私の腕には暖かい涙が 沢山沢山 流れては落ちていた―― 指輪に涙が一つ落ちた いっそう輝いて見えた 私は強く思った 本当に大切なものは 儚く もろい だけど, だからこそ 大切なモノだといえる
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