青い薔薇の傷跡

4/19
前へ
/45ページ
次へ
「霧島さんてさ」 ある日友達が言った―― 「なんか怖いよね」 「あの何でも見透かしそうな瞳とかさぁ染めてる髪の色とか」 そう、葵の髪は 綺麗な藍色。 でも、 それが凄く似合ってるんだ―― 「そうかな あたしあの人嫌いじゃないよ」 そう言って席を立ち、 「霧島さん!」 窓の外を見ている葵に声を掛けた 「あたしなんかに話かけたら省かれるよ。」 ほら、貴方はいつだって人のことばっかり 「気にしないでよ そんなの」 葵は大きく目を見開いた 「そっか… ありがとう』 ねえ、翔 昔の貴方と同じことを言ってくれる人がいたよ ねえ、葵 その“ありがとう”には深い深い意味があったね 貴方の言葉は一つ一つがとても重いんだね ふと 放課後の窓から空を見た そこからゆっくりと視線を葵に移す 夕日のオレンジを写した葵の瞳は切なさがゆらゆら揺らめいていた 私はそれさえも 綺麗に 儚く感じたのを覚えてる 今になって気付く 綺麗に見えた理由が分かったよ 大切な人が心にいるんだね ずっと想ってる人が 忘れられない人が
/45ページ

最初のコメントを投稿しよう!

33人が本棚に入れています
本棚に追加