雪、轟音、路地裏にて。

3/4
前へ
/14ページ
次へ
 思わずうめいてから、ジャケットの下から取り出したハンカチで―――無駄な努力と知りながら―――血を止めようと試みる。  出てきたハンカチは、俺の趣味に全く合わない、熊のプリントがついた物。その熊が、血に濡れていく。    ―――洗って返しなさいよ  ―――分かってるって   「・・・あ」  ふと、思い出したのは、ある日の会話。この、俺に合わないハンカチの持ち主との会話。  過ぎ去った日の、もう果たせない約束。 「はは・・・・・・泣けてくるぜ」  この状況の根源であり、自らが招いたモノ。  もう二度と、戻らない日々。
/14ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加