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「どうしたの?」
重ねて、肉塊が―――記憶の彼女が、問いかけてくる。
肉塊の中央、長い髪だけはそのままに彼女の顔があった。
「いや、夢を見ていた」
「羨ましいわね」
そう、慈しむような笑顔が、醜悪な肉の塊と対称的に在る。
だが、気配で分かる。その肉塊は再生を始めようとしている。
だから俺は、〈レイジングブル・マルチ〉をその顔に向けた。
「私を―――妻を撃つの?」
その顔が、悲しげに問いかけてくる。一瞬、俺の人差し指がピクッとなる。
―――過去。
―――幸せなセカイ。
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