序章

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遠く先には、雄大な霞ヶ浦が見え、夏になると、辺りは一面白やピンクのハスの花が咲く。私はここ、茨城県土浦市のとある家で私は生まれた。 父は、私の物心ついたときにはすでにおらず、大人になるまでほとんどの日々は母とふたりきりで過ごした。 父が確かにいたという根拠は狭い部屋の一室にポツンとある位牌からしか伺いしることができない。 母は父が何故死んだかを語ろうとしない。しかし、朝になると欠かさず位牌の前で「南無妙法蓮華経」と念仏を唱え、母の心にはまだ父が生きていることがよくわかった。
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