序章

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母は、「うちはお金がないから。」と言うのが口癖だった。 私も、周囲に新興住宅街が立ち並ぶ中、アバラを継ぎ足したような狭い我が家を見ては、その言葉がすぐに理解できてしまうのであった。 質素な生活をしている家には、記念日に好きなものを買ってもらう習慣なんてない。 中でも、私にはクリスマスと言う日が一番辛かった。 なにせ、誕生日はみんなバラバラだからいい。しかし、クリスマスは12月になると、一斉に学校や街でツリーやクリスマスプレゼントと言った話しで盛り上がっているからだ。 だから、クリスマスのない家で育った私は、クリスマスなんて元からなくていいし、早く大晦日でも正月にでもなれと思っていた。
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