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「めんどくさいよ、俺とお前にそんなロマンチックなもん必要ないべ?」
「そんな事ないわよ。クリスマスイブなんだよ? ムードってもんが必要だと思わない? 工夫次第で色々できるでしょ。部屋が無理ならイルミネーションの中を二人でドライブとかさ」
美樹は酒が入るといつもより饒舌になる。
ほんのりと赤らんだ顔で説教が始まると、なかなか止まらない。
俺はため息混じりで言葉を返した。
「ダメだよ。俺免許持ってないもん。取る気もないしな。普段からぼーっとしてるから、絶対事故起こすもん」
「そーやっていつも絶対無理とかマイナスな事ばかり言ってるから成長しないんだよ裕之は! 今夜は夜通し説教してあげるわ!」
美樹がカルアミルクを飲み干しながら言う。
窓から見える空にはちらほら雪が舞っていた。
「なあ、美樹」
俺は、ペラペラと人生論を語り続ける美樹に小さく語りかけた。
「え? なに?」
美樹が、話を止める。
「来年のクリスマスイブもさ、こうやって一緒にいれるよな?」
窓の外を眺めながら言う俺に、美樹は優しく微笑んだ。
「当たり前じゃない。来年も、そのまた来年も、ずっと一緒にいれるよ」
そう言って、美樹は俺にキスをした。
甘い甘いカルアミルクの味が、美樹の唇から俺の唇まで広がっていく。そのとろけるような甘さの中で俺は、美樹とこの先ずっとこうやって時を紡げる幸せを感じていた。
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