序章

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メアリが彼を選んだ理由は、集められた男たちの中で比較的若く、1番丈夫そうだったからだ。 運んだ列車から降ろしてすぐに選別されて動けなさそうという理由で左の列に送られた者たちか、もう作業に従事できなくなった収容者ばかりなのだから…。 骨と皮ばかりになっていて、動けないか、もし動いたとしてもすぐ止まってしまうか。 それでは意味がない。 男は痩せてはいたが、まだ肉がかろうじて残っていた。 次、施設を稼動させるまでには数時間あった。 動かすのはスイッチ一つなのだが、後片付けに時間が掛かるのが難点だ。 連れて行こうとすると、隣にいた男たちが頭を動かした。 その行為が気に食わなくて射殺に至ることもここでは多かったが、もう他の軍人達も弾の無駄使いだと思ったのだろう。 咎めはなかった。 隣にいるからといって、同じ房とは限らない。 男と髪や眼の色が違うので、むしろ今日初めてあった可能性が高い。 基本的にバラックごと民族、人種は分けられていて厳格な区別がなされている。 それでも短い時間にすでに男は信頼を得ていたようだ。
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