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386911番はメアリの頭二つ分くらい背の高い男で少し姿勢が悪かった。
裸足で足の爪も曲がって、垢が溜まっていたが、しっかりした足取りで前を歩いた。
少しでも従わない行動をとれば、後ろから撃つつもりで、メアリは拳銃を手に歩いた。
他の処分者の面倒は有能な部下が担ってくれるはずだ。
施設は一本道ながら入り組んでいて、本来近いところにある場所でも長い距離を歩かなくてはならない。
暗い煉瓦の廊下を進んだ。
NatriumLampの橙混じった光がLinoleumの床を光らせる。
蝿がゆらゆら惹かれている。
軍靴を敢えて大きく鳴らした。
そうすることが義務付けられているからだ。
ブーツは寒さで縮み、歩きにくいことこの上ない。
軍人達の間では水虫が流行っていた。
雪の中を歩いた後、ストーブが焚かれた不潔な室内を歩き回るから当然の結果だ。
メアリはまだ被害に遭っていないが心配ではあった。
それが現在の1番の心配事だった。
家族のいないメアリにとっては、故郷を思う必要はなかったし、仕事にさえ従事していれば問題が無かった。
そう、案じる必要のある相手はもうこの世にいない。
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