第一章

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386911番はメアリの頭二つ分くらい背の高い男で少し姿勢が悪かった。 裸足で足の爪も曲がって、垢が溜まっていたが、しっかりした足取りで前を歩いた。 少しでも従わない行動をとれば、後ろから撃つつもりで、メアリは拳銃を手に歩いた。 他の処分者の面倒は有能な部下が担ってくれるはずだ。 施設は一本道ながら入り組んでいて、本来近いところにある場所でも長い距離を歩かなくてはならない。 暗い煉瓦の廊下を進んだ。 NatriumLampの橙混じった光がLinoleumの床を光らせる。 蝿がゆらゆら惹かれている。 軍靴を敢えて大きく鳴らした。 そうすることが義務付けられているからだ。 ブーツは寒さで縮み、歩きにくいことこの上ない。 軍人達の間では水虫が流行っていた。 雪の中を歩いた後、ストーブが焚かれた不潔な室内を歩き回るから当然の結果だ。 メアリはまだ被害に遭っていないが心配ではあった。 それが現在の1番の心配事だった。 家族のいないメアリにとっては、故郷を思う必要はなかったし、仕事にさえ従事していれば問題が無かった。 そう、案じる必要のある相手はもうこの世にいない。
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