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「ティッシュとハンカチは持ちましたか?地上が初めてだからといって、何でもかんでも拾って食べるとお腹を壊しますからね?」
「俺は地上で言う幼稚園児か!?」
「とにかく神様は初めての地上ということもありますし、ガブリエルをお供させますので何かあればガブリエルに申しつけください。あと……」
俺のツッコミは無視かい!?と、更に心の中でツッコんでいたのだが。
「無理はなさらないでください。困った時は、必ず私を呼んでくださいね?」
ミカエル――
俺を心配そうに見つめるミカエルは、いつになく真剣な表情だった。
俺が先代から『神』の座を継いでからというもの、ミカエルとは片時も離れたことが無い。
俺の小守役だから仕方ないといえば仕方ないが、ミカエルは小守役としてだけでなく時には兄のように、時には父のように俺に接してくれている。
他の天使達は『神』というだけで、俺とは関わらないように一線引いているというのに。
ミカエルの顔を見ていると、俺は急に心細くなった。
天界から見ていて地上がどういう所かは大体把握している。
だけど実際に降りるのは初めてだし、ミカエルが側にいないということが俺を不安にさせる。
「神様、準備はお済みでしょうか?お済みなら、そろそろ出発したいのですけど」
俺とミカエルが見つめ合っていると、扉の向こうからガブリエルの声が聞こえてきた。
「あぁ、すぐ行くよ」
とうとう別れの時がきた。
と言ってもたったの5日間。
人間と違って、俺達にとっては瞬きする間の時間みたいなもんだ。
俺はミカエルに笑顔を見せた。
神妙な顔だとミカエルだって送り出しにくいだろうから。
「行ってくる。後のことは頼んだぜ?」
「かしこまりました。お気をつけて」
こうして、俺は初めての地上の旅に出かけたのだ。
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