告白

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       *        「高野遥喜君………あれ?」   名前を呼んでも返事が聞こえなくて先生が教室を見回す。見つからない姿を探す先生が少し可哀相になった。 結局遥喜の奴は戻って来なかった。 どこに行ったのか、俺には分からない。どうせどっかで寝てんだろうな。 っていうか。   (このままじゃ欠席扱いじゃん)   一応心配してみる。遅刻で来るつもりなのかな?俺の荷物を片付けたって事は早く来たんだろうけど。勿体ねぇ奴。 なんて思ったのもつかの間、先生の台詞で掻き消される。   「おかしいなぁ、朝は居たんですがねぇ」   どうやら朝のうちに柏木先生と会ってるらしい。 それはそれでまずい気もする。遅刻どころかサボりバレバレじゃん。 まぁ本人がいいならいいのだろう。 そういえば遥喜は今日日直の当番だ。逃げたのかもしれない。 …あれ?バレてるなら意味なくね?   「仕方ありません、次鷹原真君」 「はい」   先生がため息をついて俺の名を呼んだ。 適当に返事を返す。出席確認の点呼も毎日の事になると気が抜けてくるものだ。クラスのほとんどの奴が適当な返事を返す。俺も例外なくそうだ。 でも出欠がとれればいいみたいで先生は何も言わない。 続く点呼の中で先生の声が止まる。   「最上君はまた欠席ですかね」   先生が空席を見つめる。 最上さんは出席日数不足で留年している一つ年上の人だ。本来ならば先輩と呼ぶべきだが本人がそれを嫌うのでさん付けで呼ぶ。出席日数が足りてないから留年になったはずなのによく休む。いる方が珍しい気がする。でも面白いし、いい人なんだよな。 因みに頭はかなり良いらしい。 まあどうでもいいことだが。   (遥喜にメールでもしてみっかな…)   退屈で自分の携帯を眺める。もちろん机の影に隠しながら。 どこにいるのか。気まぐれな親友の名前を画面が映す。 さて、と先生が名簿を閉じる音がした。出席をとり終わった先生は今日の連絡に入る。   「今日の連絡は一つだけです」   よっしゃ。 いつもは委員会だの何だので長いが今日は早く終りそうだ。 教室の雰囲気が緩む。やっぱ早く終わると嬉しいよな。 そんな空気を感じたのか、くすりと先生が笑った。   「私たち教員、実は全員テロリストなんです」   しんと、教室の音が静まる。 いつもと同じ口調で言った先生の声にあわせてバタバタとたくさんの足音が聞こえた。          *
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