雪降る冬空

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 「雪が嫌いとか、私が嫌いって言われてるみたいで嫌だなあ」  雪菜はそう言うと、拗ねた様な顔をして、ベッドの直ぐ近くの窓に視線を向けた。  「こんなに綺麗なのにさ」  その言葉に対して、雪菜の方が、と言い掛けて僕は止めた。今の彼女にその言葉を言うのは、何だか酷な気がしたからだ。  「だって、雪が降ると空が隠れるじゃん」  僕は普段から繰り返している理由を、出来るだけいつもの様な口調で言った。  「空ちゃんは、冬空が好きだもんね」  雪菜はそう言うと、再びこちらに視線を向け、無理な笑顔を見せた。  「私、空ちゃんの描く絵、好きだな。青空の絵も、星空のも。本物みたいでさ。でも、なんだか足りない気がするんだ」  雪菜の言葉に、僕は苦笑いを浮かべるしかなかった。  自分の絵が何か足りないのは分かっていた。青空も星空も、本物の色や美しさには程遠い。しかしどんな有名な画家の絵にも、参考になる程にあの美しさを表現してる物はなかった。  「分かってるんだけどね」  僕はそれだけ言うと、頭を掻いて誤魔化すしかなかった。  「私さ」  雪菜はそう言って、僕に対して意地悪な笑顔を見せた。  「空ちゃんの絵に、何が足りないか、分かっちゃったんだ」  僕は彼女の言葉に、思わず驚いた。  「え? 本当に?」  「本当に。でも、まだ教えてあげないよ」  雪菜はそう言って、僕の質問をかわすと、再び意地悪に微笑んだ。  「私が退院してさ、空ちゃんと一緒にあの丘に行ける様になったら、隣で指導してあげる」  薄くなった胸を張って、偉そうにそう言った雪菜に、僕は愕然とした。  雪菜はもう退院出来ないと、昨日の夜に雪菜の両親から告げられた言葉が頭を駆け巡っていた。それどころか、来年までの残り一週間ももつか分からないと。  雪菜はそれを、まだ知らない。
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