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計画の発案者はノアールだ。
「五時になる前にギャラリーはカウントダウンを始めるのさ。どうだい、それにあわせて……ドカン!」
全くもって悪魔のような計画だ。
幸せな笑みに満ちていた彼等を、その一瞬後には泣き叫ぶ地獄が待ち受けている。
姉さん。
「でも僕、クリスマスって嫌いじゃないんだ」
「どうして?」
「誰も死ななくて済むでしょう?」
「そうね、それはそうね」
ニッコリと彼女は笑った。
思い出すのは、あの地獄絵図。
アレを世界中の、のうのうと何も知らない顔をして生き続ける奴等に。
それが、今年のプレゼント。とっておきの贈り物。
私は凄まじく混雑した広場を離れて、直ぐ傍の雑居ビルへと急ぐ。
この寒いのに、驚くほど短いスカートの女を避けて歩調を速めたときだった。
体格の良い斜め前の中年男の影から、小さな女の子が飛び出してきた。
「――あ、いったぁ!」
勢い良く私にぶつかって、彼女は綺麗に地面へ尻餅を付いた。
ふんわりとした胸元までの髪。
少し野暮ったいデザインの白いダッフルコート。首に真赤なマフラーを巻いた、まだ十歳かそこらの可愛らしい少女だった。
「ごめんごめん、大丈夫だったかい?」
すこし屈み込みながら、彼女が捕まって立ち上がれるように右手を差し出した。
「いいえ、私こそ急いでて前を見てなかったから。大丈夫よ、おじさん、ありがとう」
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