少女・Ⅰ

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明確に存在し続ける、ライン。 富める者、貧しい者。 肌の色、信じる神様の種類。 国境など、実際は存在しない。 存在するのは、弱き者と強い者のライン。 差別する者とされる者、殺される者と殺す者の、そのラインだ。 今は答えてくれないその人へ、私は胸の内で問いかけた。 この世はなんて不公平なんだろうね、姉さん? 思い知れば良い。 のうのうと……今有る幸せを享受する事に、なんの疑問も持たない人々よ。 無関係だと、君達の国があの戦と関係ないと、そう言い切れるのか? 祖国を燃やし、家を燃やし、それでも君達は我等を受け入れないという。 居るべき場所へ帰れという。 どこへ?どこへ帰れというのだ? 全ては消えた。あの戦火の中に。 国も。家も。信仰も。家族……姉さんも。 私は深く息を吐くと、マイクへと囁いた。 「シエル、配置に付いた」 「OK。皆、準備は良いか?」 「国際指名手配になる心構えなら、とうに出来ているさ」 おどけたブランシェの口調に、クツクツと忍び笑いの声が多数聞こえてきた。 「全ては、全ては我等が主張が為に」 「失われた同胞の為に」 「我等が信仰の為に」 「世界の改革の為に……頼んだぞ、シエル」 「ああ」
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