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自室のベッドに寝転がり、天井を見上げる。ここに来てから、一ヶ月が過ぎていた。
『六輝くん……』
『……』
コトン、と微かな音を立てて扉が開く。
声で菜乃花だとわかったけど、わざと寝たフリしてた。
菜乃花はそれには気付かないのか、俺のベッドの横に立つと、そっとブランケットをかけてくれる。
『風邪、ひいちゃうよ?』
『……』
『ねぇ……私は頼り無いかも知れない。みんなのこと、お姉さん面して何にも知らないのかもしれない。だけどね、本当の本当に……みんなのこと愛してるんだ。家族みたいに……うぅん……私にとっては家族なんだよ。だからね……六輝くん……嫌なとこあったら言って欲しいな……努力するから。無視は、辛いよ…………ね、待ってるからね?六輝くんが笑顔見せてくれる日を』
愛しさを滲ませた慈愛の声音。
少しだけ寂しげな。
『……』
胸が痛くなった。
母を思い出した。
父が死んでから、女手ひとつで俺をここまで育て上げ、過労で倒れた母を。
病院のベッドの上、気丈にも最期まで微笑んでいた優しさの溢れた顔を。
『……っ』
気付けば涙が溢れていて。
俺は菜乃花の服を掴んでいた。
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