聖夜の奇跡

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*** 『おかえり~』 『……』  玄関ホールで菜乃花に声を掛けられる。  思わず無言で視線を逸らした俺の耳に届く、菜乃花の苦笑と嘆息。  と同時に。  背後で聞こえた箒を放る音に、嫌な予感がする。振り返ろうとした刹那、俺の背中に菜乃花が目一杯のタックルをかましてきた。 『むっつき~!!』 『んなぁぁぁあっっ!!!!!?』 『ん~?どうしたぁ?お顔が赤いでちゅよ~?』 『だっ……黙れ……降りろ……っ』 『ただいまって言ったら降りたげる~』  菜乃花はにまりと笑うと、更に力を加えて俺を抱きしめてくる。  出逢ったときは何故かムカついたこの態度。  だけど。  そう、気付いてしまったんだ。 『誰が……言うもんか』  菜乃花は、 誰よりもみんなの事を大切にして、 例えどんな些細な仕草や言葉にも本質を見抜いて、 真っ直ぐに向き合ってくれる、優しさと強さを持ってる人なんだってこと。 『て れ る な 』  だってほら。 『~~……っ』  菜乃花は言葉足らずな俺を、ちゃんと理解してくれてる。
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