1人が本棚に入れています
本棚に追加
***数日後***
『……やっちゃった』
一人苦笑いを浮かべる俺。
鞄の中には、銀行から下ろしてきたばかりのお金。
母が俺の為に一生懸命貯めてくれてた貯金。
後ろめたさがないと言えば嘘になる。
だけど、やっぱり俺は菜乃花の笑顔がみたいんだ。
菜乃花といると、こころの真ん中がほんのり温かくなる。
ころころ変わる表情が愛しくて仕方無い。
ねぇ。
【好き】って言ったら、きみの表情はどう変わるのかな?
どうしても見てみたい。
照れ屋な俺が、初めて“告白”してみたくなったんだ。
『母さん……』
俺はそれを報告をするため、母の眠る地へと足を向けた。
***
人気のない墓地は街の賑やかなムードからは隔離され、ひっそりとしている。
俺以外の人の気配はなかった。
砂利を踏み締める足音だけが耳に届く。
『……』
俺は母の墓石の前に座ると、そっと手を合わせた。
最初のコメントを投稿しよう!