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『……』
信号が青になり、人波がゆっくりと動き出す。
気の早いクリスマスソングがあちこちから聞こえ、見回せば、幸せそうな恋人や、親子連れが目にはいった。
もう少しすれば、電飾も施され、完璧な聖夜への準備も整うのだろう。
【クリスマス】。
今まで全くといっていいほど他人事だったこのイベントが、今年は堪らなく待ち遠しかった。
母と住んでいたころは、一生懸命働いてくれている母に我が儘は言えなかったから、周りがいくらサンタだケーキだ騒いでいても、母のためだとガマンした。
プレゼントも貰ったことがない子ども時代。
知らないうちに、気持ちをのみこむことを覚えて、いつしか表現することが苦手になっていって……。
そんな俺をみて、母はいつも申し訳なさそうに『ごめんね』っていってたっけ……。
でもね母さん。
今なら解るんだ。
俺がもっと気持ちをだしていれば、母さんはもしかしたら『ありがとう』って言えたんじゃないのかなって……。
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