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『六輝……今日も会いにきたよ……』
横たわる六輝の瞼はぴくりとも動かない。
あの日から、一度も。
医師からは、後は気力の問題だと言われた。
六輝の生きる力にかけるしかないと。
だから私は通い続ける。
いつか六輝の瞼が開いた時、自分が側にいれるように。
『ねぇ、六輝?あのぬいぐるみ売れちゃったみたい。今日来るとき覗いたら、無くなってたんだ……なぁんかちょっと寂しいなぁ、なんてね?』
ベッドの横に椅子をひっぱってきて座ると、私はいつものようにそんな他愛もない話を始める。
『でもね、いいんだ……私の欲しいクリスマスプレゼントは一つだけだから……』
そっと六輝の手をとると、握りしめた。
囁くように呟く。
『ね、六輝……今日はクリスマスだよ?ねぇ……プレゼント、ちょうだいよ……』
堪えきれず、涙が頬を伝い、六輝の手におちた。
私の欲しいプレゼントは一つだけ。
六輝。
お願い……。
『目、開けて……笑ってよ……』
お願い……。
『“ありがとう”って言わせてよ……』
私はまだ、何も伝えてない。
このままなんて嫌だよ……。
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