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『……のか』
『……ん』
『なのか……』
遠く、近く、不安定に揺れる声で、私は閉じていた瞼を上げた。どうやらいつの間にか眠っていたらしい。
頭の上に温もりを感じる。誰かが私を撫でてくれている。
『……菜乃花』
先ほどよりも鮮明に響いたこえ。
導かれるように、私はゆっくりと身体を起こした。
『菜乃花……』
瞬間、私は驚きに固まる。
微笑み、私をみつめていたのは、ずっと待ち望んでいた人。
『……む、つ、き…………』
六輝だった。
これは……夢?
六輝が笑って私をみつめてる。
『むつき』
私は確認するように、六輝に手を伸ばす。六輝は黙って私の掌に頬を預けてきた。
『六輝……』
『うん』
『六輝だ……』
『うん』
また、涙が溢れた。
構わずしゃくりあげる私を、六輝は優しく抱き締めてくれた。
『六輝……六輝……っ』
『ごめんね、菜乃花』
『違うっ……私は……ごめんねよりも……』
『うん……待ってくれて……ありがとうね』
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