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***
『……』
瞳を開ける。
暖かな日射しがさす病室。確認するようにベッドを見下ろした。
『……六輝』
六輝は……応えない。変わらず眠り続けている。
いつかのように寝たフリなんかじゃない。
解ってた。
『やっぱり夢、だよね?』
温もりも。
笑顔も。
『……それでも、嬉しかったよ』
私は微笑むと、六輝に触れる。その瞬間、着ていたセーターの袖口から、何かが落ちた。
視線はそれを追う。
足元に転がり落ちた茶色の小さな物体。
みとめた瞬間、私は慌ててそれを拾い上げた。
それは、間違いなく夢の中で六輝がくれたプレゼント――くまのぬいぐるみだった。
それが、夢じゃないと教えてくれた。
温もりも。
笑顔も。
六輝は生きようとしているんだ……。
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