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『しょうがないなぁ……ほら』
『……』
『そんな警戒しなくても、もう何にもしないって』
『……』
ひらひらと手を振ると、六輝はまた無言で歩き出した。
私も投げ捨てた箒を拾い、六輝に背を向ける。
『……菜乃花』
『ん?』
六輝の声に振り返った私の視線の先には、真っ赤な顔をした六輝がいた。
何かを言いたげに動く唇。
そして。
『た……だいま……っ』
小さな小さな、蚊の鳴くような声。
だけど確実に届いたその気持ちに、私は頬を弛めて笑みを浮かべた。
『はい、お帰りなさい』
『……っ』
こころはゆっくりゆっくり交わって……。
少しずつ、六輝をしってゆく。
ねぇ、あなたの瞳には、私はどう映ってるのかな?
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