メリークリスマス

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  ――プルルルル ――プルルルル 「…ん…」 電話が鳴り、女性は身をよじらせた。 まだ外は薄暗い。 彼女は少し苛立ちながら、体を起こした。 「…ん…何よ…って、あら?」 ベッドに浹がいないことに気付く。 だがトイレにでも行ったのだろうと考えた。 鳴り止まない電話の音に、男性も起きた。 「あー…何だこの真夜中に。ん?浹は?」 「多分トイレだと思うわ。でも誰かしら」 彼女は部屋にある子機を取って耳に当てた。 「はい、もしもし」 『榊原さんのお宅ですか?』 「はい、そうですが」 『こちらは――警察署の者ですが』 「警察?」 その言葉に、彼も反応する。 当然だろう。 警察から電話がかかってきたのだから。 「…何のご用でしょうか」 『身元の確認が遅れてしまい、連絡するのも遅くなりましたことをお詫びします。 …どうか、落ち着いて聞いてください』 「…えっ」 彼女は、電話を落とした。 ――ガタンッ 「…はあっ、はあっ、はあっ…!!」 彼女は肩で息をしながら、部屋に飛び込んできた。 真っ白な部屋に眠る少年。 女性は少年に歩み寄る。 後ろから男性も入って来た。 「浹…?」 少年――浹は、返事をしなかった。
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