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「聞いたって……何をです?」
お隣のヨシダさんはいつも唐突だ。
「あらやだ! 何をって決まってるじゃない! 今朝の大賢者さまのお言葉よ~!」
決まってるなんて決まってないじゃない……でも、近所付き合いもあるし、ここは話を合わせて……
「それなら聞きましたわ。確か……回復魔法の使い過ぎは体に悪……」
「そうそうそう! それよ~! 回復魔法を使いすぎると、人間本来の回復能力の衰えを招くっていう話! 恐いわよね~…」
……人の話は最後まで聞いて下さいヨシダさん。
「あとアレも聞きました~?」
アレじゃ分かりません。
「最近、地球温暖化が急速に進んでるらしいのよ! なんでも、火炎系の魔法を使ったときに出る温室効果ガスとかいうのが原因だとか! いま北極の氷も溶けちゃってて大変なんですって!」
そうなんですか。初耳です。
「国も火炎系魔法の規制に乗り出すらしいんだけど……そんなの規制されたら、料理も何も出来ないわよねえ?」
「……氷雪系の魔法でなんとか気温を下げられないんですか?」
「それがダメなんですって! 仮に氷雪系の魔法で気温を下げられても、温室効果ガス自体が減らない限り意味が無いんですって!」
「魔法で温室効果ガスを消したりは出来ないんですか?」
「そんなの私が知るわけないじゃな~い!」
じゃあこの話はもう終りじゃな~い。さてと、晩御飯の支度もあるし、そろそろ帰……
「あ! あと肉体強化系……特に速度Up系の魔法が老化を早めるって話はご存知?」
空気読め。
その後も休むことなく一人で喋り続けるヨシダさん。面倒になった私は、地球温暖化に配慮して、ヨシダさんを氷雪系最強魔法でカッチンコッチンに固めた後、転送魔法で北極に飛ばしてやりたい衝動にかられたが、そこは大人。ぐっと堪えて最後まで話を聞いてあげた。
後日、ヨシダさんが『最近小じわが増えた』と騒いでいるのを耳にした。私がヨシダさんと会話するときは毎回、時間を短縮する為に、こっそりと速度Upの魔法をかけまくっているという事実は……かけられているヨシダさん自身は、まだ知らない。
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