Gのクリスマス

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  「高橋! しっかりしろ! 高橋!!」   「先輩……すいませんでした……俺……自分が恥ずかしくて……!」   「なにも言うな! わかってる! 全部わかってるから!」   頭を抱えるようにして抱きしめると、高橋は力なく笑った。   「明美に伝えといて下さい……夢を、ありがとう、って……!」   「バカ野郎! お前、全然血ぃ出てねーよ!」   「え?」   鳩が豆鉄砲をくらったようなアホ面をして、高橋は体を起こした。   「ホントだ、全然痛くない……でも、なんで……?」   「アレ、見てみろよ」   俺が笑顔で指差した先には、粉々に砕け散ったツボの残骸が。   「明美が……守ってくれたのか」   涙ぐむ高橋。救いようのないバカだが、吹っ飛ばしてしまった手前ツッコめない。   「そうだよ! お前、番号もらったんだろう!? いいなぁ! うらやましいぜこの野郎!」   「はは……お礼、言わなくちゃ、ですね」   高橋は俺に抱きかかえられたまま携帯を取出し、ツボと引き替えに手に入れた番号にコールを試みた。   固唾を呑んで見守る俺。10秒ほどの沈黙の後、高橋はゆっくりと首を振った。   「駄目でした。やっぱり、騙されてたみたいですね。8万も出して……はは……」   笑えなかった。   「バカ! このバカハシ! さっきぶつかったショックで壊れたんだよ! そうに決まってる!」   高橋は捨てられた子犬のような目付きで俺を見上げる。   「先輩……うわあああぁぁぁぁんおんおんおんおん」   おんおんと泣きだした高橋は、何を思ったのか雪を掬って食べだした。   本当に何を思って食べているのか小一時間問いただしたい所だが、吹っ飛ばした手前ツッコめない。   「うまいか? 高橋。滅多に食えるもんじゃないからな」   もはや妖怪ユキクイと化した高橋から返事はなかった。俺は構わず話しかけた。そうせずにはいられなかったから。   「そうだ、今度雪が降る時にはシロップ持ってこような、うん。メロン味がいい……ほら、クリスマスツリーみたいだろ」   自分でもよくわからないフォローをしつつ、俺たちはガチホモ丸出しで抱き合ったまま、高橋は雪を食い、俺はひたすら泣いていた。   夜が明けるまで、ずっとそうしていた。   ――翌日当然のように腹を壊した高橋の新ギャグで、この切なくも悲しい物語に幕を下ろそうと思う。   「ゲリークリスマス」
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