白の奇蹟

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「いらっしゃいませ。」 綺麗なワンピースと、お洒落なスーツに身を包んだ男女がひっきりなしに店を出入りする。 クリスマス・イヴのディナータイム。 窓の外にはシンプルにシルバーのライトで飾られたクリスマス・ツリーを臨む。 流れる音楽は、クリスマス・キャロルだろうか。 そんな中あたしは、一つを除いて全て予約で埋まったテーブルに案内する。 「お待ちしておりました。 本日はご予約いただき、まことにありがとうございます。…」 このセリフ、もう何度言いながら、 胸がズキズキ傷み、 泣き出したい衝動に駆られたことか。 だけど、今は仕事中。 お客さんの幸せを壊しちゃいけない。 あたしは唇を噛みしめる。 気持ちを押し殺して、無理矢理に笑顔を作るのだ。 だけども、心は泣いている。 ほんとだったら、あたしだってヒロシと、ここにいたはずなのに。
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