白の奇蹟

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「ありがとうな」 ヒロシはそう言って、あわただしく電話を切ったのだった。 『ありがとうな』 優しい声。 ヒロシにありがとうって言われると、泣きそうになるのはどうしてだろう。 ヒロシは本当に、ありがとうって思って言っているのよね。 分かるのよ、雰囲気で。 ありがとう……。 こっそりと口にだしてみる。 お客さんに、当たり前のように繰り返すセリフ。 そして23時30分。 最後のお客さんを送り出す。 あたしたちは一列になって礼をしてお見送り。 お客さんも、今まで見たことがないくらい、嬉しそうな顔だった。
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