白の奇蹟

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「お疲れ様でした。……今日は、ありがとうございました」 また言った、ありがとう。 今日はいっぱいありがとうを言ったけど、全然ありがたくない、あたしの「ありがとう」。 店長は笑いながら、 「ありがとう、メリー・クリスマス!!」 あたしも振り返って、遠慮がちに手を振って、 「メリー・クリスマス!!」 と叫んだ。 東京のクリスマスは雪は降らないけれど、霜で木々が白く凍っていた。 目が覚めるような冷たさ。 心が冷め切ったあたしと、おんなじ。 だって、きっとあたしだけだろう。 隣に恋人がいないだけで、こんなにもひねくれた心で家に向かっているのは。 と、人通りの少なくなったイルミネーションの向こう、 白い靄の中に、黒い影が踊る。
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