opening

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また、老婆の眼前に広がる海も現実のものではなく室内で映し出された物…、いわばかりそめの物だ。 そんな海を老婆は食い入るように見つめていた。 「う~ん…やっぱりこの世界の海は最高ですよねぇ~、うーん…。」 うっとりとした表情と声で老婆はそう言った。見れば老婆が見ている海を映し出している機械?、も映画用のスクリーンではなくまた、家庭用のTVでもなかった。(無論50型のプラズマTVでもなければワンセグ携帯でもない。) 「はいっ!では今度は海底を見てみたいと思います!!。」 老婆が独り言のようにそう呟くと手に持った大きな杖を振り上げ、海を映し出している物の正体である大きな水晶玉へと杖の先端を向けて「ネシ・トーカ!」とまるで呪文のような言葉を唱えた。 すると次の瞬間には水晶へ向けられた杖の先端から光が発生し、やがてその光は筋となって水晶に直撃した。瞬間に起こるまばゆい閃光…。それでも老婆は動じる事なくその眼はじっと、水晶に向けられていた。(閃光に眼がやられていたような感じがしたがまあ、気のせいという事にしとおこう。) 閃光が晴れると水晶の中に広がっていたのは別世界…。楽しそうに海底で泳ぐ魚達…、そして一面に広がる蒼の世界…。 先ほどの海上に広がる物とはまた違うこの蒼の世界達はまさしく「海の楽園」と呼ぶにふさわしい物だった。
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