3.雪白の月

2/4
前へ
/40ページ
次へ
「僕たち、もう終わりだね…。」 「うん。 バイバイ………。」 あれからもう1年がたつ…。 君がいなくなってから1年が過ぎた。 部屋を掃除していると、ふと僕は気がついたんだ。 「このシミ…。」 僕らが付き合い始めてから君が初めて僕の家に来たとき、君はコーヒーを入れてくれた。 「キャ~ッ!」 ガッシャーン!! 床に転がってたビンにつまずいてしまった。 コーヒーはこぼれ、じゅうたんはコーヒーのシミで染まってしまった。 そんな思い出の詰まったシミ…。 「あっ、あれも。」 辺りを見回してみると、僕らの脱け殻がたくさんあった。 1年前からなにも変わってない部屋。 だけど、何かが変わったような気がするんだ。 「何なんだ? この感じ…。」 心の中で呟く。 またいつかのように君と笑い合えるように、僕は頑張っているよ。 ねぇ…。 僕は、君の前では弱い男になりたくなかった。 常に強がってたんだ。 そんな僕は、君の瞳にどんな風に映っていたんだろう…? 僕は、あの空に浮かんでいる雪白の月を見上げる度に思うんだ。 僕はただ君を愛していただけなんだ。 ただそれだけなんだ。 こんな事を思っていると、なんだか胸が痛くなる。 まるで心に、ぽっかりと穴が開いたみたいに…。 君にさようならって言われるよりも、君にさようならって言う方がきっとツライと思う。 もしあの時、勇気を出して切り出せていたなら、今のこの痛みは少しでも楽になっていたのかな。
/40ページ

最初のコメントを投稿しよう!

76人が本棚に入れています
本棚に追加